肩書のメイクアップ・アクティビストとはどのような意味を持つのか教えてください。
メイクアップとは、単に肌の上に描いたペイントではなく、アート、コミュニケーション、符号化とその解読、社会的プレッシャー、自己表現などを表す世界最古の形態のひとつです。メイクアップには多数のレベルがあり、それを大勢の人に伝えることが私の目標です。私たちの生きる現代にはチュートリアルが溢れていますから、皆「どうやって」行うのかばかり気にしていて、「なぜ」行うのかが議論にあがることはありません。何かに賛同する前に、そのものについて疑問を持つように皆さんを促したいと思っています。美の世界において欠点や忌避とされるものは多いですが、誠実さと創造性を発揮することで、その考えを癒すことができると考えています。ありのままの自分の受け入れ方を教えるには、「普通であることを普通にする」のが重要です。もはやメイクアップではなく、人間の美意識の領域に踏み込んでいるかもしれませんが、これがメイクアップ・アクティビストとして私の目指すものです。
@makeupbrutalismが誕生した経緯について教えてください。
私は、メイクアップアーティストを職業として10年間活動を行っていますが、早い段階から美しさにはあまり興味がないことに気づいていました。完璧さよりも個性を大切にしたかったのです。この思いが原動力となって、さまざまなシェイプやテクスチャーを組み合わせて実験し、自分の作品に新たな一面を加えるようになりました。私にとって、そして他の人にとってもよりエキサイティングなものを創ろうとする試みの下、makeupbrutalismが誕生したのです。今では、makeupbrutalismとは概念である、と表すのが一番正確ですし、その在り方を気に入っています。メイクアップアーティストにとっての『詩論』としてmakeupbrutalismをスタートさせましたが、今ではコンセプチュアル・クリエイターのアイデンティティを表現する場となっており、概念論、メイクアップ、写真、アートを独特のバランスでミックスして、人々の感覚に一石を投じる活動を行っています。興味深いのは、makeupbrutalismがこのような変化を経ても、常に新たな目的や目標が浮かび上がってくることです。現在は、オンライン空間におけるアートの自由を保護することで人々を啓蒙し、作品展や本の出版を通じてオフライン空間でもmakeupbrutalismを発信するという私の夢を叶えることを目標としています。
GUCCI ビューティのルックのインスピレーションはどこから得ましたか?
「完璧である必要はない。それゆえ、唯一無二なのだから」という言葉が、ふと心に浮かびました。社会批判と、特別な存在であることを認められたい願望が入り混じったフレーズです。まずはリップから着手して、「完成していない」魅力のある美しさを生み出すことを大きな目標としました。いわば、完璧さを求めるプレッシャーからの解放です。壊すことで新たに創る過程はとても楽しく、さまざまなテクニックやツールを用いて特定の要素を排除することで、従来とは真逆の印象を持つルックを完成させました。反対に、アイメイクのビジュアル制作においては、ビーズで要素を追加して、スモーキーアイに仕上げています。「どちらでもあるけど、どれでもない」感覚を表現しており、細部はリアルであるよう努めました。
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